相続した実家、解体して売る・そのまま売る・貸す・持つの損得
情報の確認日:2026年10月21日(国税庁・国土交通省・法務省の公表資料)
相続した実家を使う予定がないなら、相続から3年目の年末までに売るのが、手元に最も多く残る選択です。3,000万円控除で税金がほぼゼロになり、固定資産税と管理費も止まります。解体して売るか、そのまま売るかは、不動産会社の査定を2通り取ってから決めます。

この記事の結論
- 使う予定がない実家は、相続から3年目の12月31日までに売るのが最も手元に残ります。利益から最大3,000万円を引けるためです(国税庁 No.3306)。
- 解体して売るか、そのまま売るかの差は小さいことが多いです。更地と古家付きの査定を両方取り、解体費200万円前後と比べて決めます。
- 貸すと3,000万円控除は使えなくなります。1981年以前の家は耐震補強だけで平均183万円かかります。持ち続けると、年15〜30万円程度が出ていきます。
比較4つの選択肢を、お金・時間・手間・税金で比べる
土地が2,000万円で売れる実家(木造30坪・1975年築・1人暮らしの親から相続)を例にします。解体費は200万円、仲介手数料は売値の3%+6万円と消費税で計算します。
| 選択肢 | 手元に残るお金 | かかる時間 | 手間 | 税金 |
|---|---|---|---|---|
| 解体して売る | 約1,730万円 (2,000−解体200−仲介73) | 解体1〜2か月+売却3〜6か月 | 片付け・解体の立会い・業者選び | 3,000万円控除で譲渡税ほぼ0。更地の1月1日をまたぐと固定資産税が3〜4倍 |
| そのまま売る | 約1,730万円 (1,800−仲介66) | 売却3〜8か月 | 片付けと契約のみ | 買主が翌年2月15日までに解体すれば3,000万円控除。固定資産税は据え置き |
| 貸す | 年72万円の家賃−費用 初期費用300〜500万円 | リフォーム3〜6か月+入居者募集 | 修繕・入居者対応が続く | 家賃に所得税。3,000万円控除は使えない。固定資産税は据え置き |
| 持ち続ける | −15〜30万円/年 | — | 年数回の見回り、草刈り、郵便物 | 固定資産税+都市計画税。3年目の年末を過ぎると3,000万円控除を失う |
※ 表は横にスクロールできます
売る2つの方法は、手元に残る額がほぼ同じになります。買主は解体費の分を値引きして買うためです。差がつくのは、固定資産税の時期と、売れるまでの期間です。
注意:金額は目安です。売値、解体費、譲渡所得は家ごとに違います。3,000万円控除の条件(1981年5月以前の建築、売値1億円以下など)は3,000万円控除の記事で確認してください。
売る古家付きで売るとき、いくら値引きされるか
古家付き土地の値引きは「買主が払う解体費+手間の分」です。解体費200万円の家なら、200〜300万円程度安くなるのが目安です。買主は解体の手配や、地中に何が埋まっているかの不安も引き受けるため、解体費そのままより少し大きく引かれます。
一方、自分で解体して更地にすると、買い手の幅が広がります。土地だけを探す人、建売業者、駐車場を作りたい人も買えるようになります。売れる速さは更地のほうが早い傾向です。
ただし、更地にして売れ残ると損が出ます。翌年1月1日に家がないと、土地の固定資産税の軽減(200㎡まで6分の1)が外れます。評価額1,500万円の土地なら、年3.5万円が10〜14万円程度に上がります。仕組みは固定資産税の記事にまとめました。
- そのまま売るのが向く人:200万円を先に出したくない。早く手放したい。買主が決まってから壊す流れでよい。
- 解体して売るのが向く人:家財の片付けに時間をかけられる。市区町村の補助金が使える。更地の需要が強い地域にある。
貸す1981年以前の家を貸すと、いくらかかるか
1981年5月以前に建てられた家は、現在の耐震基準(新耐震)を満たしていません。人に貸すなら、耐震補強と水回りの更新が前提になります。木耐協の調査では、旧耐震の家の耐震補強は平均約183万円(中央値155万円)でした。
これに台所・浴室・トイレ・給湯器の交換、内装、電気設備を足すと、初期費用は300〜500万円程度が目安です。家賃が月6万円なら年72万円で、固定資産税と修繕費を引いた回収には6〜8年かかります。
貸した時点で、3,000万円控除の条件(相続後に貸していないこと)を外れます。あとで売るとき、売値の約95%が利益とみなされ、約20%の税金がかかります。2,000万円で売れば約390万円です。貸す判断は、この税金の差も含めて決めてください。
注意:家賃収入があると、相続人の確定申告が毎年必要になります。遠方なら管理会社に月額家賃の5%程度を払うのが一般的です。
持つ持ち続けると、年にいくら出ていくか
何もしなくても、空き家は年15〜30万円程度の支出になります。内訳は次のとおりです。
- 固定資産税・都市計画税:土地と家で年5〜15万円程度。評価額は毎年の納税通知書で確認します。
- 管理:空き家管理サービスは月5,000〜10,000円程度が目安です。自分で行くなら交通費と日数がかかります。
- 保険・光熱費:火災保険は空き家だと加入できる商品が限られ、保険料も高くなります。通水・通電を残すと基本料金がかかります。
- 修繕:雨漏り、屋根材の落下、塀の倒壊は所有者の責任です。隣家や通行人に被害が出ると損害賠償になります。
2023年12月の空家法改正で、放置して「管理不全空家」の勧告を受けると、家があっても固定資産税の軽減が外れます。10年持てば150〜300万円の支出で、解体費と同じ額になります。「いつか決める」の期限は、3,000万円控除が切れる相続3年目の年末に置いてください。
順番判断の順番。売却見込み→補助金→解体時期
- 売却見込みを調べる不動産会社2〜3社に「古家付き」と「更地」の両方の査定を頼みます。差が解体費より大きければ解体、小さければそのまま売るのが基本です。売れる見込みが薄い地域なら、空き家バンクや隣地の所有者への声かけも並行します。
- 補助金を調べる解体するなら、実家のある市区町村に解体補助があるかを確認します。1981年以前の木造を対象に、費用の1/2・上限50〜100万円程度を出す自治体が多いです。申請は契約前が原則で、受付は4〜12月に集中します。市区町村の補助金のページで探せます。
- 解体の時期を決める固定資産税は1月1日の状態で決まります。年明けに解体し、その年のうちに売るのが最も無駄がありません。3,000万円控除の期限(相続3年目の12月31日)から逆算して、売却活動の開始日を決めます。
片付けが終わっていなくても、相談は始められます。先に査定と補助金の有無を確かめ、片付けと解体の段取りはそのあとで組んでください。
FAQよくあるご質問
相続人が複数いて意見が合いません。先に何を決めればよいですか。
売るか・持つかを先に決めます。売る場合は、代表者1人の名義にして売り、代金を分ける「換価分割」が多いです。名義を変えないまま売ることはできないので、相続登記(2024年4月から義務)を先に済ませます。
解体してから売ると、3,000万円控除は使えますか。
使えます。相続から3年目の12月31日までに売り、解体後に建物や駐車場などを作っていないことが条件です。相続後に貸していないことも必要です。
査定額が解体費より低い地域です。どうすればよいですか。
売れない土地を更地にすると、固定資産税だけが上がります。隣地の所有者への売却、自治体の空き家バンク、相続土地国庫帰属制度(審査手数料1.4万円、負担金20万円から。建物があると使えない)を順に検討してください。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(1981年5月31日以前の建築、相続から3年目の年末まで、売値1億円以下)
- 国土交通省 空き家対策特設サイト「空家法の改正(2023年12月施行)と管理不全空家の住宅用地特例の解除」
- 日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)「耐震診断結果 調査データ」(旧耐震住宅の耐震補強 平均約183万円・中央値155万円)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度」「相続登記の申請義務化(2024年4月1日施行)」
税金の扱いは個別の事情で変わります。この記事は制度の概要で、税務の助言ではありません。申告の前に税務署または税理士に確認してください。