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相続した実家をどうするか迷っている方へ

実家を手放す最後の手段。相続放棄と国庫帰属、どちらを選ぶか

情報の確認日:2026年10月21日(国税庁・国土交通省・法務省の公表資料)

売れない実家を手放す公的な出口は2つです。相続放棄は相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立て、預貯金を含む全財産を手放します。相続土地国庫帰属制度は家を解体して更地にし、負担金20万円以上を払って国に引き取ってもらいます。どちらも「ただ捨てる」制度ではありません。

古い実家の前で書類を手に考え込む夫婦
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この記事の結論

  • 相続放棄は、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。費用は収入印紙800円と郵便切手です。実家だけでなく、預貯金も含めてすべて放棄します。
  • 相続土地国庫帰属制度は、審査手数料1筆1万4,000円と負担金原則20万円で土地を国に渡します。建物がある土地は申請できないので、先に解体が必要です。
  • 他に受け取りたい財産があるなら国庫帰属、借金が多いか財産がほとんどないなら相続放棄が基本です。放棄しても、住んでいた家の管理義務が残る場合があります。

比較2つの制度は何が違うか

相続放棄は「相続人にならない」手続きです。実家だけを選んで放棄することはできません。国庫帰属は「相続した土地だけを国に渡す」手続きです。預貯金や他の不動産はそのまま持てます。

項目相続放棄相続土地国庫帰属
手放すもの親の全財産(借金も)申請した土地だけ
期限相続を知った日から3か月期限なし(相続登記後)
窓口親の最後の住所地の家庭裁判所土地がある都道府県の法務局(本局)
建物そのままでよい解体して更地にする
費用印紙800円+切手1.4万円+20万円〜
かかる期間申立てから1か月程度が目安標準処理期間8か月

※ 表は横にスクロールできます

相続放棄3か月で決める。放棄しても管理義務が残ることがある

申立先は、親の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。期限は「自分のために相続が開始したことを知った時から3か月」です(民法915条)。財産の調査が間に合わないときは、期間の伸長を申し立てられます。

必要な書類は、申述書、親の住民票除票(または戸籍附票)、自分の戸籍謄本、親の死亡の記載がある戸籍謄本です。費用は申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手です。司法書士に頼むと3〜5万円程度が目安です。

放棄すると、相続の順位は次に移ります。子が全員放棄すれば親の兄弟姉妹が相続人になり、その人たちが実家を引き継ぎます。親族に無断で進めると、後で揉めます。

注意:2023年4月1日施行の改正民法940条に、放棄した人の保存義務が定められました。「放棄の時に現に占有している財産」は、他の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで保存しなければなりません。国土交通省の事務連絡では、家の鍵を持っている、自分の荷物を置いている場合も占有者に当たる可能性があるとしています。全員が放棄して引き渡す相手がいないときは、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てます。予納金は数十万円〜100万円程度が目安で、放棄が「無料で終わる」とは限りません。

国庫帰属更地にして、負担金20万円から。承認まで8か月

2023年4月27日に始まった制度です。相続か遺贈で土地を取得した人が申請できます。共有の土地は共有者全員で申請します。申請先は土地がある都道府県の法務局か地方法務局の本局で、支局や出張所では受け付けません。

引き取ってもらえない土地

  • 建物がある土地:申請の段階で却下されます。実家を渡すには、先に解体して建物滅失登記まで済ませます。
  • 境界が明らかでない土地:隣地との境界に争いがあると却下です。古い実家で一番つまずく条件です。
  • 工作物・樹木・地下埋設物が残る土地:塀や庭木、浄化槽が残ると不承認になり得ます。解体の見積りに撤去を含めてください。
  • 崖がある土地、担保権が付いた土地、土壌汚染がある土地:対象外です。

費用の目安

審査手数料は土地1筆につき1万4,000円で、却下や取下げでも戻りません。承認後に払う負担金は、宅地なら面積にかかわらず原則20万円です。ただし市街化区域か用途地域内の宅地は面積で計算し、法務省の例では100㎡で約55万円、200㎡で約80万円です。市街地の実家は20万円では済まないと考えてください。

これに解体費用が加わります。30坪の木造なら150〜200万円程度が目安です。合計すると、解体+手数料+負担金で200〜300万円程度を見込むことになります。

どのくらい承認されているか

法務省の速報値(2026年9月30日現在)では、申請6,125件、国庫帰属3,231件、却下86件、不承認103件、取下げ1,162件です。審査が終わった案件のうち約95%が帰属しています。ただし申請の約19%が取下げで、そのうち415件は「却下・不承認になると分かった」ための取下げです。申請前に法務局の相談窓口で要件を確かめれば、手数料の無駄は避けられます。処理期間は仙台法務局が標準8か月と案内しています。

判断どちらが向いているか

  • 相続放棄が向く人:親に借金がある。実家以外に受け取りたい財産がない。相続を知ってから3か月以内で、兄弟姉妹など他の相続人と話がついている。
  • 国庫帰属が向く人:預貯金など他の財産は受け取りたい。3か月を過ぎている。解体費用と負担金を合わせて200〜300万円程度を払える。境界に争いがない。
  • どちらも向かない人:市街地で土地に値が付く場合です。解体して更地で売るか、買主が解体する条件で売るほうが手元に残ります。3,000万円控除の記事と市区町村の補助金を先に確かめてください。

国庫帰属を選ぶなら、順番は「相続登記 → 解体 → 滅失登記 → 申請」です。解体の補助金には「解体後に売却や活用をすること」を条件にする自治体があります。国庫帰属が目的だと使えない場合があるので、申請前に自治体の窓口で確認してください。

FAQよくあるご質問

実家だけ相続放棄して、預貯金は受け取れますか。

できません。相続放棄は親の全財産について相続人でなくなる手続きです。実家だけを手放したいなら、相続したうえで売却か相続土地国庫帰属制度を検討します。

相続放棄したら、実家の管理は一切しなくてよいですか。

放棄の時に家の鍵を持つなど現に占有していると、改正民法940条により、他の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が残ります。全員が放棄した場合は、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

建物を残したまま国庫帰属を申請できますか。

できません。建物がある土地は法律上の却下要件です。解体して建物滅失登記を済ませたうえで申請します。塀や庭木、浄化槽などの工作物も不承認の理由になるので、撤去まで含めて解体を発注してください。

実家の解体、まず費用から。

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出典

  • 裁判所「相続の放棄の申述」(申述期間・申述先・費用・必要書類)
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年9月30日現在・速報値)
  • 法務省 相続土地国庫帰属制度 パンフレット(審査手数料・負担金の算定例)
  • 国土交通省 事務連絡「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う空家等対策の推進について」(令和5年3月31日、改正民法940条の占有者の考え方)

税金の扱いは個別の事情で変わります。この記事は制度の概要で、税務の助言ではありません。申告の前に税務署または税理士に確認してください。